改装直後のオフィスを“ほこりゼロ”で引き渡す!~粉じん・塗料残りを防ぐクリーニング~
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オフィス改装工事が完了し、真新しい什器やパーティションが搬入された直後──
一見するとピカピカに見える室内でも、目視では捉えにくい粉じんや塗料ミストが空気中や設備の奥に残っているケースは少なくありません。微粒子が空調稼働時に再浮遊すると、従業員の呼吸器トラブル、OA 機器の故障、さらには工事や清掃を請け負った企業へのクレームへと発展しがちです。
このリスクを最小化する最後の関門こそ、竣工検査や備品搬入と並行して計画的に実施する 引き渡しクリーニングです。
1.引き渡しクリーニングとは?
・目的の違い:日常清掃が「使用中に発生した汚れの除去」を目的とするのに対し、引き渡しクリーニングは「工事由来の特殊汚れを完全に除去し、施主へ空間を引き渡す前の品質保証工程」です。
・責任分界点:ビル管理契約では施工会社負担とする例が多いものの、テナント側が負担するケースも存在します。契約時に範囲・完了基準を明文化しておかないと「誰が再清掃するのか」を巡る紛争が生じます。
・国際規格との関係:ISO 41001(施設マネジメント)は施設管理全般の要求事項を定め、清掃管理も含めた品質維持を推奨しています。また、日本建築学会標準工事約款にも施工後清掃の役割が盛り込まれているため、これらを参考に基準を設定すると説明責任を果たしやすくなります。
2.失敗事例に学ぶ“やり残しゾーン”
経験豊富な清掃会社でさえ、下表のエリアは汚れが残りやすい要注意ポイントです。
やり残しゾーン | 発生原因 | 再清掃コスト(目安) |
---|---|---|
配線ダクト内部 | 床開口から落ちた石こう粉が堆積し通電不良を招く | 作業員2名×1h+養生費:約2〜3万円 |
天井グリッド | 上向き施工時の粉じんが梁に付着し照明点灯時に降下 | 高所作業費+足場設置:約3〜5万円 |
OAフロア下 | 支持脚周囲の紙粉が掃除機で取り切れず残留 | タイル一時撤去+集塵作業:約2〜4万円 |
窓ガラスシーリング | 硬化した塗料ミストが砥石研磨でしか除去できない | 研磨+再コーキング:約5〜7万円 |
トイレ換気口 | パネル裏の粉じん放置で臭気と換気性能低下 | ダクト清掃車+脱臭処理:約4〜6万円 |
3.清掃工程と適正ツール
プロが推奨する作業フローは 3段階 です。
1.粗掃除
養生材を撤去しつつブロワで大きな粉じんを床へ落とし、業務用掃除機で回収。掃除機は HEPA フィルター 搭載が必須。
2.高所除じん
脚立や高所作業台を使用し、天井グリッド・照明器具上をマイクロファイバーモップで乾拭き→アルコール仕上げ。粉じんが再度床に落ちるため 粗掃除→高所除じん の順序厳守。
3.床フィニッシュ
ハードフロア:ポリッシャー+中性洗剤洗浄→ウェットバキューム→ワックスまたはコーティング
タイルカーペット:ドライバキューム→エクストラクター洗浄→乾燥
効率化のコツ:ゾーニング(区画分け)と送風一方向化が鍵。空調を一時停止し、排気口側に移動式集塵機を配置することで粉じんの再付着を防げます。
4.コスト&スケジュール管理
延べ床面積 | 参考レンジ(要見積もり) | 特記事項 |
---|---|---|
〜300㎡ | 150〜400円/㎡ | 養生撤去や高所作業が多いと上限寄り/床研磨・ワックス・窓洗浄を含むフルパッケージ価格 |
300〜1,000㎡ | 100〜170円/㎡ | 床仕上げのみなら下限寄り、全工程では 130 円以上が目安 |
1,000㎡〜 | 70〜120円/㎡ | 大面積割引が適用されやすいが、高所・特殊床材で上振れ |
※現場条件(養生撤去量・高所作業・夜間作業・騒音規制)で ±30〜50% 変動します。
夜間・休日作業 には 10〜20%の割増が発生するのが一般的です。工期を圧縮する場合は、内装仕上げ班(昼)⇔クリーニング班(夜)の 2班並行方式 を採用し、最終夜に床養生を再敷設しない工程設計が鍵となります。
検査工程では、テナント代表者立会いのもと “ライト&ホワイト手袋”検査(手袋に粉じん付着がないか確認)を行い、合格後に鍵・カードを返却する流れを推奨します。
6.まとめ
引き渡しクリーニングは、改装プロジェクトを有終の美で締めくくる 品質保証プロセス です。この記事で示した“やり残しゾーン”と清掃フローを参考に、責任分界点・検査基準を契約段階から共有しておけば、
・再清掃ゼロ
・追加工事・工期遅延の回避
・テナント満足度向上
といったメリットが得られます。最終報告書には写真付きのチェックリスト結果を添付し、次回改装時のベンチマークとして活用しましょう。粉じんゼロの快適なオフィスを、関係者全員でスムーズに実現しましょう。